なにからなにまでてけとーです。


by 言壺

2017/07に読んだ本。

7月の読書メーター
読んだ本の数:7
読んだページ数:1809
ナイス数:11

冬虫夏草 (新潮文庫)冬虫夏草 (新潮文庫)
読了日:07月16日 著者:梨木 香歩
四十七大戦(2) (コミック・アーススター)四十七大戦(2) (コミック・アーススター)感想
いきなりチートになっちゃって、いいのか。
読了日:07月12日 著者:一二三
製造人間は頭が固い (ハヤカワ文庫JA)製造人間は頭が固い (ハヤカワ文庫JA)
読了日:07月12日 著者:上遠野浩平
白暮のクロニクル 11 (ビッグコミックス)白暮のクロニクル 11 (ビッグコミックス)
読了日:07月09日 著者:ゆうき まさみ
マギ 34 (少年サンデーコミックス)マギ 34 (少年サンデーコミックス)
読了日:07月09日 著者:大高 忍
マギ 33 (少年サンデーコミックス)マギ 33 (少年サンデーコミックス)
読了日:07月09日 著者:大高 忍
膚の下 (下)膚の下 (下)
読了日:07月08日 著者:神林 長平

読書メーター






『膚の下』
 →ハヤカワ オンライン
火星三部作の3作目にして、時系列でいうと最初の物語。
発売された頃に読んだはずなのだがびっくりするぐらい内容を覚えておらず……再読なのにほとんど初読みな気分での上下巻。これが大変なアタリ。あーーー! 読み直してよかった!!
三部作の前2作・『あなたの魂にやすらぎあれ』『帝王の殻』があまりタイプじゃないかったから、最終作であるこれも斜め読みしちゃったんだな。ばかだな、当時の自分。だけど今読めたからとっても結果オーライ。


舞台は未来の地球。戦争で荒廃してしまったため、「人間を全て火星に移住させて、アートルーパー(人造人間)を監督役に機械人の労働力で地球を復興させた後、人間を戻す」という計画が進行中。火星に人を輸送している最中だが、その計画に反対する人間の勢力もいて……という状況。アートルーパーは火星に人々を送る国連軍に所属している。
で。この作品のなにがすごいって、アートルーパーと機械人と人間と、それぞれの思惑を描いているところ。

まず主人公は人間ではなく、アートルーパーだ。人間のために作られた彼らが、アートルーパーたるために思考して、行動して、周囲から影響を受けて成長していく。読者から見て人の道から大きく外れるようなことはしないが、それでも人とは違うところへ成長していく。
見た目は青年だが、実際は誕生してからまだ5年。5歳である。といっても「5歳児」というわけではない。確かに成長途中として扱われてはいるが、所属する組織の人々からは“人間の大人”としての振る舞いを期待されている。ただ、思考が若い故にか考えが純粋で、相手の考えを理解できずに物語冒頭では相手を怒らせてしまい、そのひとつが物語の最後までつきまとう。

彼らは人間ではないが人間になりたいとは思わない。アートルーパーであることに自信を持ち、アートルーパーとして生きようとする。アートルーパーは彼ら以外には居ない。見本となる先人もおらず頼るものもない中で模索していくのだ。
これが、いい。
そして、その様子を「そうだ」と思わせる方法で書きあげて一作品にしている神林長平がすごい、と思う。


機械人のえがきかたも面白い。
神林作品には機械生命が様々出てくるが、各作品で現れ方が違う。
「敵は海賊」シリーズでは人語と人のユーモアと罵詈雑言を理解し、人に寄り添いつつ人の上位に立ちたがるような、かわいらしい存在。
「戦闘妖精雪風」シリーズでは作られたものとして人の命には従うものの、自らに不利になることは行わない。アウトプットは機械語。
この「火星」シリーズの機械人は作品によって差があるが(その理由は本作を読めば理解できる)、AIで思考するヒト型機械である。人間は機械人を使役している……つもりでいるが、機械人は今の状況が自分に不利益ではないから従っているまで。何か不利なことが発生したらすぐに人間を見限るよ……という、実は危ういとも言える状態。
機械人は個体としては複数いるが、思考はただひとつ。なので、どの機械人に話しかけても相手は同じ。機械人は複数の場所に同時に存在していられる。また、寿命がないので時間的に大変余裕がある。


世に多く出ている“人と異なる種”を描く作品は、なぜか「人ではないことを恥じる」ものが多い。
が、本作はそうではなく、それぞれがそれぞれたらんとして生きている様を描いている。
“アートルーパー”とは何か? 人でないものとして正解は何か? 
それを想像して形になっている、この作品が好きだ。

もちろん人間の物語も国連軍・反国連の集団・一般市民と様々。国連軍の中も一枚岩ではなく、様々な思惑がぶつかっていく。


なお「火星三部作」となっているが時間軸が繋がっているというだけで、それぞれは全く異なるストーリーである。なので、どの作品から読んでも全く構わない。
最初に書いたように本作が一番古い時代の物語、次に『帝王の殻』、『あなたの魂にやすらぎあれ』と時が進んでいく。
神林ファンとしては刊行順に『あなたの魂〜』→『帝王の殻』→『膚の下』と味わってほしいが、単に「おもしろいSF作品が読みたいなー」というのであれば、ぜひ、『膚の下』から。
一番熟れた文章です。
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by kototubo | 2017-08-12 19:36 | 本。 | Comments(0)